味探検:焼津市:ミルクガニ「長兼丸」

駿河湾の海底からの贈り物“ミルクガニ”を味わう。これはうまいカニだ!

041211chokanemaru01pict1405_1  港で船からの直売のみ

 市場には流通しないが、漁船からの直売で味わえる“うまい”カニがあると聞き、焼津市小川港を訪ねた。このカニは、通称「ミルクガニ」と呼ばれ、エゾイバラガニの和名を持つタラバガニの仲間。駿河湾中央部の水深700m以上の深海冷水域に生息する。金網かごに餌を入れ漁獲する漁法のため、漁獲が限られ、焼津市小川漁協所属「長兼丸」(ちょうかねまる)船主・長谷川久志さん(写真。右は一緒に漁に出る奥さんの順子さん)一人が実質漁獲しているだけだ。

 「自分で船を持つようになってからは、未知の漁場や誰も取らないサカナの漁獲に挑戦し続けてきた」というパイオニア精神旺盛の長谷川さんが、深海漁場を操業中に、このカニ資源を見つけたのが30年前のこと。

「初めは、食べてこんなにおいしいのに、雑ガニ扱いで市場ではまったく値がつかず、女房と二人で行商して売り歩きました」と話す。

 カニのミソ・内臓が含まれる頭(面)は味がよくないので、この部分は取り外し、8本の足041211chokanemaru0pict1405 と足の付け根の部位に詰まった身肉を食す。甘味があり、北方系のカニに比して劣らない味と、価格の安さが口コミで広がり評判となる。活きている獲れたてのミルクガニの直販に、今では、土日入港する11時頃には、岸壁で客が待つほどの人気ぶり。

 カニのサイズと価格は、小型の750g以下が1匹500円。数も多く人気サイズの850~940gが同1000円(写真)。1キロ以上の大型2000円まで5ランクある。

 宅配送(代引き)でも購入可。蒸すのが標準の食べ方だ が、長谷川さんおすすめの“1041211chokanemaru033秒”湯につけ、刺し身状をワサビしょう油で食べるシャブシャブがこたえられないうまさだ。

PS:ヌタウナギってなんだ?

(中島満:MANA)

○「長兼丸(ちょうかねまる)」
JR東海道線焼津駅下車。直売は、静岡県焼津市小川港旧港岸壁の同船接岸場所。「カニ」赤旗目印。販売は毎週土・日の午前11時頃から売切れまで。天候により出漁不可日あり問い合わせ・予約注文が無難。電話054-624-6605(自宅)。地方発送可(支払い代引き・限定量のため着荷に7~10日ほどかかる場合あり。

注:内容は取材時のものです。現時点で価格等変更がある場合があることをご了承下さい。取材掲載:東京新聞2004年12月16日「味探検」連載404回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用は管理人(MANA)までご一報下さい。

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味探検:郷土の味:中央区「京ばし 松輪」

三浦半島沖好漁場から四季折々の豊富な魚介がそろう

中央区 「京ばし 松輪」(まつわ)

041125matsuwa01  東京周辺で味探検できる郷土料理や、産地直送素材料理の紹介をはじめよう。まずは三浦半島の松輪港から直送される地魚料理の店「京ばし 松輪」から。

 ご主人・荏原正典さん(写真)は、三浦周辺の地物魚貝情報を聞くなら“この人”と知られる存在だ。

 マダコの佐島、マグロの三崎と三浦に数ある漁港の中で、城ヶ島に近い松輪(まつわ)は、沖合いに「マツワ」や「マタギ」と呼ばれる好漁場の“根”や“瀬”を持ち、夏場が旬の「松輪サバ」は、漁獲がわずかで、プロも珍重する幻のサバだ。

 料理人として松輪港に通いつめ、地元漁協(三浦市漁協松輪支所)から“マツワ”の名称使用を公認されるほど。魚卸売り業「三浦地魚本舗」を経営しながら、2004年9月に「京ばし 松輪」を開店。松輪サバの刺し身やバッテラは、取材時には漁期終了で、来年までおあずけだが、冬場の楽しみが用意されている。

 四季折々水揚げされる豊富な種類の魚貝から選りすぐった「刺し身盛り合わせ」(写真2人前。1人1800円~。2人前から)をすすめたい。写真左下から時計回りに、ヒラメ、赤ヤガラ、ギンガメアジ(主人が手に持つ魚)、真ダコ、サザエ、イナダ、メダイ、クロダイ、ヒラソウダガツオ、紋甲イカ、中央がウスバハギの肝あえ(魚種は日々変動するそうです)。

041125matsuwa02  カヤカリ、ガランチョウの刺し身、焼き・煮魚にカラ揚げなど、珍魚・大魚に雑魚料理メニューが豊富だ。「どんな魚?」と店長や店員に尋ねれば答えてくれる。

 下旬からマタギ漁場でとれるキンメダイの鍋や刺し身が加わる。

昼限定、〝究極〟の「アジフライ定食」とは何ぞや?

 昼定食には地物マアジを使い、大根おろしと醤油で食べる「アジフライ定食」(1200円。他単品で地魚刺し身「海鮮漬け」300円)もある。(中島満:MANA)

○「京ばし 松輪」
東京都中央区京橋3-6-1秋葉ビルB1。地下鉄銀座線「京橋」駅2番出口を銀座中央通りにでて、銀行先左手。徒歩1分弱。電話03-5524-1280。営業昼午前11時30分~午後2時(月~金)。夜は午後5時~10時。定休は日曜・祝日。カウンター10席・テーブル22席・小上がり8席。

注:内容は取材時のものです。現時点で価格等変更がある場合があることをご了承下さい。取材掲載:東京新聞2004年11月25日「味探検」連載401回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用の場合はMANA宛ご一報下さい。

Matsuwaajifurai○注記(1):昼限定、〝究極〟の「アジフライ定食」とは何ぞや?:どうも、ネットでこの店を検索すると、アジフライ定食に〝究極〟が付く記事が載っているらしい。新聞掲載には、載せられなかったアジフライ定食の写真は、右のとおり。

 定食に付く付け合せの料理もあるから、値段はさておいて、「アジフライ」という料理に、はたして〝究極〟という形容詞がふさわしいのかどうか、という単純な??を感じるのは、筆者だけであろうか。そもそも、料理のメニューには、〝格〟というものが付いて回るというのが、筆者の味の価値観があって、アジという魚の素材を、〝フライ〟という料理のメニューにするとき、それは大衆食としての食堂のアジフライの枠を超えては存在しないのである。最近の言葉で言えば料理の品格とでも言おうか。どんなに高鮮度で、脂ののった季節のアジを素材にしたとしても、大衆食アジフライの品格の粋を超えることはできないというのが筆者の考えである。究極の食べ方もなにも、そんなものは、店に用意された既製の〝とんかつソース〟を付け合わせにたっぷりと盛られたキャベツの千切りととtもにドボリとかけて食べる定番の食べ方こそが、アジフライ定食の一番うまい食べ方なのだと信じて疑わない。だから、店主に、こう食べるのが一番だ!と、いわれるのも、筆者など、大きなお世話、と、ふところからマイソースでも取り出し対心境に駆られてしまうのだが……。蛇足であるが、……

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味探検:三鷹市:パン「風のすみか」

手作り地粉や素材の力が味と香を引き出すNPOパン屋さん

コミュニティー・ベーカリー「風のすみか」

041106kazenosumika01pict1154  井の頭公園裏手にちょっとユニークなパン屋が誕生した。店名はコミュニティー・ベーカリー「風のすみか」。不登校児が通い、引きこもり青年の自立支援に活動する「フリースペース・コスモ」のスタッフや家族・協力者による地域密着形「仕事場づくり」のアイデアから生まれた店だ。
 「経営からパン作り技術、素材選びを学ぶために実地に修行を積み研究してきました」と話す、スタッフリーダーで工場長の浅野由佳さん(写真)。さっそく「山型食パン」(1斤250円)「角型食パン」を購入し、トーストにして食べてみた。粉の風味を残したしっかりとした焼きのよい味の食パンだった。
 この店の特徴は、素材の麦や野菜を自分たちの手で無農薬で育てる実践にある。「食パンは、まだ外国産小麦を使わざるを得ないのですが、収量が増える来年には自前で製粉した粉のパンを作ります」と話してくれた浅野さんから、「あんぱん」(130円)と「おやき」(1個140円)をすすめられた。

041106kazenosumika02pict1154  神奈川県津久井町韮尾根地区の協力者が土地を提供して始まった栽培農園で、東京農工大学や地元農業者の援助を受けながら、小麦や野菜作りが始まっている。地域名からとったという「ニローネ緑の学校」の収穫品を使い母親たちが作るアンコを入れた「あんぱん」に「ひじき・キンピラゴボウ・切干大根」3種の惣菜が入った「おやき」の味には感心してしまった。

 栃木県の篤農家・上野長一さんが生産したライ麦で作る「ライ麦パン」(160円~)の噛みしめるほどに味がでるハード系や、自家製黄な粉を加えた「きなこのバターロール」(70円)もうまい。(中島満:MANA)

○紹介するパンの商品名と価格:山型食パン250円。角型食パン250円。あんぱん130円。きなこのバターロール70円。おやき(きんぴらごぼう・切干大根・ひじき3種)140円。ライ麦パン(大きさによって)160円~。

○「コミュニティー・ベーカリー 風のすみか」
東京都三鷹市下連雀1-14-3文化学習協同センター1F。JR中央線三鷹駅下車、南口に出て玉川上水下流方向沿い「風の散歩道」を歩き万助橋右折、吉祥寺通り「ジブリ美術館」斜め前右手。徒歩約15分。電話0422-49-0466。営業午前11時30分~午後6時。定休日は月・火曜日。惣菜パン除き地方発送可。

注:内容は取材時のものです。現時点で価格等変更がある場合があることをご了承下さい。取材掲載:東京新聞2004年11月4日。味探検連載399回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用のばあいはMANA宛ご一報下さい。

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味探検:浅草雷門・鰻「色川」

江戸っ子のきっぷがウナギに乗り移った

台東区雷門 色川

 駒形橋と上野駅をつなぐ浅草通りを田原町方向に歩く。ビル街か040626unagiirokawa01_1 ら一歩裏に入れば、木造家屋と寺院が立ち並ぶ景観が続く。浅草にウナギの名店は数多いが、あえて1軒を選べというのなら、おあつらえ向きの鰻屋が住宅街の一角にひっそりと暖簾を出している。
  「色川」といい、ご主人と呼ぶよりは、オヤジさんと呼ぶほうが喜ぶ色川正則さんが営む(写真)。江戸っ子を地でいく色川さんのキップがウナギに乗り移った蒲焼きが味わえると評判の店だ。地味な店の構えだが、暖簾をくぐると、カウンター越しに、パシッパシッとうちわをはたく小気味よい音の出迎えを受ける。
 色川さんは、文久元(1869)年創業の6代目。客との洒脱な会話も有名だが、蒲焼のうまさも1級品。「うな重」は1600円、1900円、2200円、2900円(写真)。
 「ウナギは養殖全盛といっても1本1本選びぬき、あとは串を打ち蒸して焼くだけ。単純作業だが、ウナギに成仏してもらう心粋で毎日毎回が勝負。備長炭の炭火の香りをウチワではたいて味にうつすというのは理屈じゃあ語れない」と話す。
 色川のウナギは、決して大ぶりのサイズではなく、口に入れて食べやすいほどよい大きさ。「何でも、でかけりゃいいってもんじゃあない」という。040626unagiirokawa02ウナギ問屋を回り、ウナギを選び抜く。いつもあるとは限らない天然ウナギも色川さんの眼力で確かなものだけを買い付ける。メニューに「天然あり」と出るわけではないが、その日の幸運にめぐり合った客のみが天然ウナギの恩恵によくすることができる(価格は時価)とか。
 丁寧な仕事ぶりが味わえる江戸っ子のキップを感じる店だ。(中島満:MANA)

○「色川」
東京都台東区雷門2―6―11。東京メトロ・都営浅草駅下車A5番出口出て駒形橋たもと交差点(五サ路)を浅草通り田原町方向に曲がり一本目の道を右折すぐ左。徒歩3分。電03-3844-1187。営業時間・午前11時30分~午後1時30分。午後5時~売り切れまで。定休日は日曜・祝日。カウンター6席ほかテーブル・座敷計30席。

注:内容は取材時のものです。掲載:東京新聞2004年7月1日「味探検」連載380回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用は管理人(MANA)までご一報下さい。

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