味探検・連載439回「夏の味」上野原市「レストラン夢キッチン・ハーバル」

太陽の恵み、大地の滋養「摘みたてハーブサラダは癒し系」

パンチの効いたハーブOsadaisii  

「パンチの効いた味は一味も二味も違う」と前回の斉須政雄シェフがほれ込んだハーブ生産者「うえのはらハーブガーデン」を訪ねた。パンチの効いたハーブの味ってどんな味?。

「まず畑に行きましょう」とハーブガーデン主宰者の長田恵美子さん(写真上右)が案内してくれた。7月まで農業委員を務めた長田さんが、ハーブ栽培の実践からつかんだ「都市との交流型農業」を地元で理解してくれた農家でつくる「上野原こだわり野菜生産者の会」。なかでも“ルッコラ”作り名人として知られる石井瑛干(てるゆき)さん(同左)が作るハーブを口にいれた。

野性味たっぷりのルッコラやマスタード

 パリッとしたルッコラの葉は、ゴマの濃厚な味に辛味がきいて、しかもさわやかさが口に残る。「太陽の恵みを一杯に受けた畑の環境はハーブ栽培の絶好地。無農薬栽培の土作りをして世話をやいてあげれば、パンチの効いた味に育つ」と長田さん。隣りに育つマスタードの葉の野性味たっぷりの辛さは感動もの。

 長田さんらが作るハーブ・野菜は、有名ホテル・レストランのシェフたちが自ら味を見に足を運び、口コミで広まった。市場出荷せず、レストランへの直売のほか「こだわり野菜の宅急便」(各種ハーブやトマト・ズッキーニなど旬野菜。1箱3500円送料込み。FAX注文のみ)があり読者も購入できる。

Osadaisii02  また、農園のハーブを味わえる直営店「レストラン夢キッチン・ハーバル」が上野原駅近くで営業している。山のようにハーブが盛られた「朝摘みハーブサラダ」(写真下中央。630円)がおすすめ。ゴルゴンゾーラチーズやトマトの好みのソースで食べる「手づくりニョッキ」(同右)やピザなど、素材の味を大切にという長田さんの心のこもった料理も味わえる。
(©中島 満)

○メモ「レストラン夢キッチン ハーバル」
山梨県上野原市新田983番地。JR中央本線上野原駅下車南口にでて階段下り駅前の道沿いに右手方向徒歩3分左手。電0554-62-2226。営業昼11時30分~14時30分。夜18時~21時。定休木曜。全45席。予約が無難。「こだわり野菜の宅急便」は、FAX(0554-63-1438)のみにて受付。

○注:内容は取材時のものです。掲載:東京新聞2005年8月25日「味探検」連載第439回。写真記事:copyright 2007~2011:,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用は管理人(MANA)までご一報下さい。

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味探検:港区三田仏料理「コートドール」

時が止まったかような静謐さのなかで、冷たくも熱い珠玉のフランス料理を味わう

名料理人〝斉須シェフ〟は笑顔で調理場に誘ってくれた

 真夏のひとときを静謐さの中でフランス料理を味わうなら「コートドール」と決めていた。マンションの中庭の一角に、店名を記したドアがなかったら、この奥に名店があるとは分からないほど、ひっそりとした店構え。「簡素で、おおらかにして清潔な仏料理」を掲げてきた名料理人・斉須政雄さん(写真下右)がオーAjitanken20050811437cortdor02ryouriナーシェフをつとめる。
 季節ごと週ごとに替わるシェフえりすぐりの“昼のコース”(4500円のみ。夜のコースは1万5000円。他にアラカルトメニューあり)を注文した。
 この日のメニューは、1品目「赤ピーマンのムース」(写真上・左上)。塩味をきかせただけの真っ赤なトマトソースに浮かぶ赤ピーマンの薄桃色のムース。簡素にしてさわやかな野菜の味が伝わってきた。
 「アナゴのテリーヌ、ピクルス添え」(同手前)。夏アナゴの淡白な味と、クリーミーさと和風感を融合させたしっとりとしたテリーヌ。キューリのピクルスの酸味とマッチした夏の味だ。
 「アオダイのソテー、ローズマリーソース」(肉を選べば「仔羊のロースト、ラタトゥイユ添え」)。夏、脂がのる高級魚の皮目をパリッと焼いたメーンディッシュだ。Ajitanken20050811437cortdor01_1
  デザートは、ほのかにウイスキー香がする「シャーベット」(口直し)と「マンゴーのババロア果汁ソース」(同上右)。果汁の甘さと香りと酸味がエキゾチックな冷たいデザートだ。

夢は共有するものさ

 料理も人がらも飾り気なしの斉須シェフ。「共に汗する青年の眼差しの中に昔の自分がいる」と、修行半年に満たない兼子大輔さん(同左)と、仏産キノコ“ジロール”を共に刷毛で掃除をしながら「夢は共有するもの」と話してくれた。昼夜とも予約が無難だ。(中島満:MANA)

○メモ「コートドール」
東京都港区三田5-2-18三田ハウス1階。都営三田線・南北線白金高輪駅下車2番出口から一の橋方向大通り沿いに歩道橋のある信号渡り古川橋1本手前の道右折約100m先右手三田ハウス中庭左手。徒歩10分。電03-3455-5145。営業昼12時~14時。夜18時~21時。定休月曜・第2日曜。全34席。予約が無難。

注:内容は取材時のものです。掲載:東京新聞2005年8月11日「味探検」連載437回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用は管理人(MANA)までご一報下さい。

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味探検:中野区「たんどーる」

店主は香りの魔術師、暑い夏こそスパイシーなキーマカレーはいかが

Tandoor01_1  夏の暑さが厳しくなるほどにスパイシーなカレーが食べたくなる。カルダモン、セージ、クミン等の香辛料は、トウガラシやコショウの辛さと融合し、食欲減退気味の体を活性化させてくれる。
 この季節になると足繁く通うカレー専門店「たんどーる」が中野区にある。店名は、ナン(インド風パン)を焼く素焼きの壷の窯“タンドール”からとったというだけあって、ここの「焼きたてナン」(1枚320円・写真下上)や「タンドリーチキン」はうまいのひとこと。
 店主の塚本善重さん(写真上)は、名門インド料理店で10年間修行、20代半ばで開業し8年たつ。「店は小さいが大きな志をもち、誰にも負けない味と香りを出すため日々精進」と語る。
 店のオリジナルメニュー「噂の!鶏肉の梅カレー」(1100円)は、ウメの酸味とスパイシーさが見事に融合した味と、口コミで広まった。これと並ぶ店の看板メニューが「豚ひき肉のキーマカレー」(980円・写真下手前)。コショウは、パウダー・粗引き・ホールを時間差で使い分けるとタマネギの甘味とトマトの酸味がコショウの辛味とマッチし、カレースパイスが融合したキーマカレーができるという。
Tandoor02_1  店主は、一見すると仏頂面で少々無愛想な接客ぶりだが、20種類以上ものスパイスを配合することにかけては誰にも負けない香りの魔術師なのだ。真夏の夜のキーマカレーの味に新たなカレーの味体験をするだろう。駅のホームに面して店があり、カレーの香りの発生源をたどれば、すぐにこの店にたどり着く。「三色豆のサラダ」(写真左上)や夏限定隔週メニュー「豚ひき肉とゴーヤのキーマカレー」もおすすめだ。(中島満:MANA)

○メモ「たんどーる」
東京都中野区沼袋1-8-22ヤマニビル2階。西武新宿線沼袋駅下車、下りホームにある南口を出てすぐ線路沿いの道を左折左手ビルの階段を上がる。徒歩1分弱。電03-3387-2172。営業時間昼12時~14時30分。夜18時~22時(日・祝日21時まで)。定休月曜。火曜日は夜(ディナー)のみ営業。全14席。

注:内容は取材時のものです。現時点で価格等変更がある場合があることをご了承下さい。取材掲載:東京新聞2005年8月4日「味探検」連載436回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用の場合はMANA宛ご一報下さい。

注(2):タンドールのホームページ

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鎌倉市「写楽」

写楽が実在していたら江戸の町でどんな料理を食べていたのだろう?

01 (味探検2005年4月14日掲載) 鎌倉の味探検のたびに取材を申し込んできたが「駅から遠いですし紹介していただくような店では」と、店主・藤代一雄さん(写真)から断られてきた「写楽」という店がある。料理も酒も極上だが、居酒屋とも小料理屋とも異なり、ジャズを聞きながら、ご主人の料理が出来上がるのを、日本酒を傾けながら時を過ごすそんな店だ。
 初めて訪れたとき「玉子ぶわぶわ」(600円。写真下左)という料理を注文した。油揚げの細切りが入った炒り玉子なのだが、不思議な甘い味の記憶が残った。この料理名の由来を聞きたいと今回訪ねたら、「書斎にきた友人と語り合い、手作り料理を食べてもらうような店なので、それで構わないのなら」と取材に応じてくれた。
  浮世絵師・写楽が実在していたら、写楽の住んだ江戸で味わった料理はどんな料理だったのか。「写楽と江戸料理の世界を表現したかった」と藤代さんは、店名の由来について話してくれた。「玉子ぶわぶわ」とは、池波正太郎の文章に出てくる料理という。遊郭のお女郎さんが、気に入った客に朝食としてもてなすとすれば、こんな味になるに違いないという料理の写楽バージョンメニューという。
 もう一品「蕗の董の焼味噌」(800円。同右)を注文した。フキノトウ、生姜、ネギを刻み、長野の手作り味噌でねり、土鍋のフタにすりつけ、炭火で焼いた素朴な料理Syaraku02blogだ。二つの料理に合う日本酒として奈良の「風の森」という酒を選んでくれた。山海の味を楽しめるが、これからの季節なら、カツオの腹皮の銀と身肉の赤が引き立つ銀作り「鰹のさしみ」(1600円)がおすすめだ。酒の後には「盛り蕎麦」や各種粥も用意されている。(中島満)

○メモ「写楽」
神奈川県鎌倉市常盤330-1。JR鎌倉駅下車、東口バス乗り場から大仏前経由梶原行き・大船駅行き・藤沢駅南口行き等のバスで梶原口バス停下車。進行方向1本目の道を右折約100m先左手。電0467-32-1904。営業午後7時~翌朝午前4時。年中無休。カウンター10席他計25席。昼定食(午前11時~午後2時)。

注:内容は取材時のものです。現時点で価格等変更がある場合があることをご了承下さい。取材掲載:東京新聞2005年4月14日。連載420回。写真記事:copyright 2007,Mitsuru,Nakajima:リンクは自由ですが、記事写真引用の場合はMANA宛ご一報下さい。

注(2):主人のブログ発見:鎌倉 粥茶屋写楽~ 一期一会 ~

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