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『コモンズ論再考』では何が提起されているのか?

Commonsron_1 『コモンズ論再考』では何が提起されているのか?

(鈴木隆也・富野暉一郎編著、A5判270ページ・晃洋書房)

―「コモンズと所有」、あるいは「コモンズと法」を考える意味について―

この記事は、コモンズ研究会MLへの投稿文(2006年7月23日)再録です。

皆様

MANAです。(このあいだは、結局A先生のお誘いにのって、京都の地球研フォーラム「森は誰のものか」を聞きに出かけました。とても勉強になりました。先生はじめ皆様いろいろありがとう御座いました)

ところで、金曜日1冊の本が手元に届きました。京都の出版社・晃洋書房の最新刊『コモンズ論再考』(鈴木隆也・富野暉一郎編著、A5判270ページ)です。7月30日発行とあるから、同じ編集者仲間で、「売れない本作りをするN君のようなMさんが京都にいる」と、なんとも、ほとんどけなされている紹介のされ方で仲を取り持ってくれた先生(そのⅠ教授はどうもほめているつもりらしい)の紹介で知り合い、それいらい「入会」と「総有」と「漁業権」と「コモンズ論」の理解の仕方、あるいはユウゴウとハンパツの仕方について議論をしてきた丸井さんからの謹呈本でした。

私が出した「ローカルルールの研究」(佐竹五六・池田恒男他著)http://www.manabook.jp/localrule-saiban.htmを贈った返礼の意味もあっての、本屋さんに並ぶ前の、同社でもまだホームページの新刊紹介にも載せてていないほかほかの状態での謹呈であったのかもしれない。光栄であり、感謝します。(売れないので、人のふんどし中で宣伝しちゃいます)

研究者というスタンスとはまた異なり、編集者サイドでも、時代や思想の動向や研究者が向おうとしている方向などを実は、情報交換をしていて、本を作る、あるいはルポルタージュを書くというジャーナリスティックな観点で、コモンズ論は、これからどういう傾向をたどるのか、或はダドルベキかの意見交換をしていることを、恥ずかしながら吐露しておきます。僕は研究者じゃないんだから、こんな新刊紹介の仕方もアリという事で投稿しております。

この本は、2005年9月龍谷大学で行われた「里山ORC第7回研究会: 第50回 コモンズ研究会」で、問題提起と若干の議論が展開された「コモンズと所有」(≒「コモンズと所有と所有権」)あるいは「コモンズと法」についてのテーマを核にすえて、現代のまちづくりや都市計画、景観論における「公と共と私」(ざっと大まかに言い換えれば「共の利益や公共性と土地問題」)を土地所有権論再考の視点から一冊の本として提起した、おそらく日本で最初の本であるのだとおもいます(実はそう編集者のMさんが申しております)。

しかし、実は日本で一番初めに、このような問題意識にもとづいたテーマの本を出したのは、「コモンズ」という言葉を使わなかっただけで、不肖私の「ローカルルールの研究」なのであって、Mさんより1ヶ月早いのだからと強がり(ほとんどキョセイとミエ)をいいます。僕の本は決定的致命的に売れずに、Mさんの本は「売れない本の範疇のなかでは」という限定付きで、きっとたくさんの人に買って貰えるでしょう。この本のほうが、時代の要求にあって、読みたくなる本です。ほんと。このセンテンスの前段は蛇足です。

「コモンズ論再考」のなかで展開している「公と共と私」のテーマは、一昔前であれば国家の政策の中で現れるテーマに紛れ込んでいたのですが、現代ではもはや、地方自治論あるいはまちづくり論あるいは「地域産業復興論」(これだけは小生の勝手な造語)として展開されるはずの「地域」あるいは「地方」において、これから市民と行政と学問の総力を挙げて作り上げなければならない議論であり課題であると考えております。実定法でも、慣習(入会・総有概念も含めて)実体においても、その根拠を規定できない国家規範タイケイのなかで議論するより、法と慣習の主体者たる市民と地域が「管理と利用における法的機能の不備の現状」を率直に認めあって補完しあいながら自治的に「ローカルルール」を創出していかざるを得ないのではないか、というような理解を私はしておるわけです。

私がコモンズ論への関心と期待を1990年代の中ごろより持ち始めたのは、社会や経済の理解解明の一助になるというスタンスより、市民という立場で自己を主張していかざるをえない都市生活者が、日本の中にあって、世界市場の中では弱小の立場を強制されつつ我慢をしながらも、きっと生きながらえる力を持っているであろう農林漁業生産者と「共」存できる知恵を、「公」のありうべき姿と、「私」の所有論のハザマで、きっと従来の学問の成果を総合させるようなかたちで、方向付けを出していく事になる研究ジャンルに育っていく、という点を意識してのことでした。それを海からみればというかたちで、自分流に本を編集して出してきました。

「コモンズ論再考」には、現在のコモンズ論が展開されるまでの系譜を、詳細に描きつつ、確かに、コモンズ論では避けてきた(……のか、いや、けっして避けてなどいない、かどうかは大いなる議論が必要であるが……)所有論を明確に取り入れていかねば、地方が要求する、まさに、この10年間の生死をかけた生き残り索を図っていくときに「実践的手法、知恵」を提示できないのではないか、という一編集者の思い入れを感じることができるのです。事の性質によっては小異(の論争)を捨てなければいけない時期が現代であるというように、危機感を持っている小生としては、本書が、いわゆる環境社会学や環境経済学の外側(何が外かはわからないほど僅かだし、現状ではもうボーダレスといってよいと小生などは思っているのですが)にスタンスを持っている法学部(民法及び法社会学)系を中心とした研究グループによって提起されていることに、大変に意義があることのように思うのです。

この1,2年で、あきらかにコモンズ論の方向が二つに分かれていきそうな流れを感じているのは私だけでしょうか。研究者同士だと、それじゃあ、その二つとはなんだ、はっきりせよ、と問い詰めるだろうけれど、まあそれは、それぞれで考えればよいのですね。こういうずるい手法を編集者やフリーライターは使う事があるので信用されないのかもしれませんね。

こんなゴタクをくだくだいうより、目次を書いて終わりにします。

『コモンズ論再考』(龍谷大学社会科学研究所叢書第68巻)

目次

第1部:所有論としてのコモンズ論

 第1章 「コモンズ」論と所有論―近年の社会学的「コモンズ」論に関する覚書―

 第2章 土地所有権論再考

第2部:公共性の再構築と「公・共・私」

 第3章 公共性の再構成―「官・民」型社会から「公・共・私」型社会へー

 第4章 コモンズと年の公共性論

第3部:まちづくりから見たコモンズ

 第5章 まちづくりにおける住民の共通利益

 第6章 不文律の約束事として守られてきた美しい街景観―東京・国立のマンション訴訟で争われた「景観利益」をめぐって―

 第7章 計画的なまちづくりの推進と住宅用借地の共同管理―京都府網野町浜詰地域におけるコモンズが果たす今日的意義―

第4部:入会理論の再検討

 第8章 法学的入会権論の「源流」―中田総有論ノート―

 第9章 コモンズとしての入会

コモンズ論関連の出版と論文の内容を(僅かに小生流にトレースしている範囲)見ている限り、明らかに、今年が、「コモンズ論」研究の次のステップに入った転機の年になっている、とそんな気がしています。

門外漢ですから頓珍漢なとらえ方をしていてもご容赦くださいませ。この本は確かに、コモンズ論がステップアップしていくときの転換点をリードする1冊の中に入ってくるような気がします。こういうとらえ方からやってみようという若い研究者にとっては刺激的、魅力的な書であってほしいと、編集者の独り言です。

こんなおかしな投稿でもありかどうかは、わからないけれど、多分ありだろうと思い投稿しました。送ってくれたMさん、寄贈お礼の個人メール出そうと思ったんですが、大学の先生方は夏休みだし、こんないい加減な紹介をしてみる事にしました。(2006年7月某日記)

まな出版企画(MANAしんぶん)中島 満

 

◎発行先:晃洋書房:京都市右京区西院北矢掛町7

◎電話:075-312-0788

◎定価:本体2900円(税別)

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コモンズ研究会:http://freett.com/commons

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コメント

補記:参考サイト
(1)http://satoyama-orc.ryukoku.ac.jp/report/report_2005/pdf/satoyama-1-5.pdf
(2)http://blue.ap.teacup.com/applet/wakkyken/20050910/archive

投稿: MANA | 2006年11月14日 (火) 01時03分

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